プロットGLL-1

 22世紀

21世紀以降の急激な人口爆発、環境破壊のあとに生じた第二の危機、人類の高齢化と食料不足

国際的統一の下におかれた人間社会、その高度な統治の元で決定されたのは

・人類の継続的な断種
・総数規制

年齢、性別、地域ごとに断種率が決定され、ランダムに選ばれた人間は減らされていく

しかし、実際はその巨大な官僚機構の中で、乱数は調整されており、故意に断種を免れる者、免れる地域、団体、性別などが無数に存在していた。

それは確証なき差別として知られていた。

断種執行官であったKは、ある日自分の娘が断種対象となっていることを知る。
その執行日目前、彼は免れる方法を思いつく

「自然な生と繁殖」を標榜していた暴力的地下組織グループGLL(Green Life Liberation)に対し機密情報を渡すことを引き換えに、娘と家族の保護を得るのであった。

その情報は悪用されてしまう、国際政府の主要人物が次々と「断種」されていく。

主要な拠点もすべてテロによって壊滅、コンピューターネットワークも奪われてしまい、世界中のドローンやナノマシーンはGLLの支配の下に置かれることとなった。主要な政府人物はすべて粛清され、以降は断種は停止、繁殖や生存に制限は無くなった。

以降30年が経過した。

人類は再び深刻な食糧不足と頻発する大規模紛争の危機にあったのであった。

続く....


#登場人物
* コーネリアス・ショーン
 世界を覆す機密情報を売った男。娘を救うことはできたが、家族はGLLのテロに不遇にも巻き込まれ死亡。旧世界政府との革命運動時に左半身を負傷し、彼の腕や足はほぼ機械化(ナノマシン連動型、マイクロAI制御)されている。
 アフリカ大蜂起紛争時の、GLLによる大虐殺を知り、GLLに疑問を持ち始める。

* ナオミ・ショーン
 GLLの協力によって断種を免れた、Kの娘
 以降、GLL内部のエンジニアとしてドローン、ナノマシン関連のコア研究開発に携わる。

* アキラ
 旧世界政府の断種執行事務次官
 その断種の手法が革命後犯罪として認定され死刑の判決を受ける。だが、逃亡に成功し、以降、生体認証IDをナノマシン技術で偽装して逃げ続けている。
 
* ヒロト
 GLLによる解放によって断種を免れた元少年。しかし、彼らの破壊行為と現在の世界情勢に不満を持っている。ナミビアでの大規模人民蜂起に参加したが、仲間はすべてGLLによって殺害され、以降世界各地を転々とし、諜報および破壊活動をしている。
 GLL政府によるA級テロリスト認定。

* マッド
 本名・出身国籍不明。通称マッド。
 GLL革命の主導者の1人。世界政府の解体および新政府再構築に深く関わっている。
 
 
* ファーガスン
 食糧危機問題の解決のために、一国をすべて貸しきって食料生産技術の実験をしている科学者。遺伝子改良技術と、高カロリーの栄養食の生産によって飢餓の解消を目指している。
 彼の貸しきった国はその領土の90%が食料生産関係の施設、農場となっており、数百万人が労働に従事していると言われているが、内部の情報は公開されていない。
 

 
 

 

 

 

GLL2 SF はじめのみ

## GLL REBIRTH

 世界政府の保持するナノマシンのアクセス権は、複製不可能な量子秘密鍵によって制御されていた。

分散制御技術が発達した21世紀移行、ドロイドやAI、各種ドローンは分散アプリケーションとして管理されることが多くなった。

分散アプリケーションとは、各個体がピアとして判断し、戦場全域の情報は常に相互通信によってやり取りされるものであう。ビットコインを始めとする分散型P2Pシステムは21世紀初頭に開発され、以降研究開発の進化とともに人工知能、ドローン、アンドロイド、戦場のドロイド、兵器のセキュアな管理の基盤技術として使われた。それらの利点は、予めソフトウェアさえインストールしておけば、中央の精密な制御なしに自律的に各マシンが行動するようになることだ。

戦場は常に多角的に多くの環境情報が変動するため、20世紀型の中央コントロールはもはや時代遅れとなり、有効な戦術的作戦行動はできなくなっていた。

分散アプリケーションを主力とした軍隊を初めて導入したアフリカのソレト連邦は内乱である革命戦争において部隊を投入した。その時の優秀なエンジニアによって開発された分散アプリケーション(DAPP-Proto-2)によって、米軍を始めとする国連多国籍軍は歴史的な大敗を喫した。小国で国力の弱いソレト連邦であったが、戦術性の高い作戦行動が行われたのだ。

以降、世界各国で分散型技術の軍事投入は加速した。

22世紀、GLLの反乱に際しても、世界政府の保持する強大な軍事力に反抗するのは不可能に等しかった。世界政府のDAPPは強固なアルゴリズムを実装しており、ほぼすべての通常兵器による戦闘に勝機は無かった。

それを逆転させたのは、GLLの上級技術員コーネリアスによる秘密鍵に関する情報のリークだった。

秘密鍵のリークによって、分散型システムは脆弱性を晒すことになり、GLLは軍隊を乗っ取り、反転攻勢と転じたのであった。量子秘密鍵はGsec2577型暗号と呼ばれ、従来破ることができないとされていたが、世界政府による自らの脆弱性研究はその弱点を発見し、それがリークによって突かれてしまったということだ。

コーネリアスは、戦後、GLL側で元世界政府の裏切り者として歓迎されていたのだが、GLLの強権的中央集権型の統治の限界を感じていた彼は、GLLのネットワークから自らの生体ナノマシンネットワークを分離し、独自のピアとしていることを選んだ。

 

 

短編:ぼくらの補完

短編:ぼくらの補完

 たゆたう波の間。

起きているとも寝ているとも言えない意識。おぼろげな意識。 

そこで僕らは手を繋いでいた。波は気持よく、そこに浮かんで溶けているような心地がした。いつしか僕は何も考えず、そこにただ「在る」ようになった。

  隣にいるのは誰? わからない 温かい手?冷たい手?

 時折強く握られるようにも感じる。しばらく漂い、いつしか砂浜に打ち上げられた。「ねえ、・・・?」 何かが聞こえたが、言葉がうまくわからなかった。「ねえ、・・・した・・ある?」。・・・・よくわからない。

 「よくわからないよ。なんて言ってるの」

自然と言葉が出てきた。しばらく無言のあと。

「ねえ・・・キスしたこと、ある?」

キスしたことある?そう聞こえた。

あるようなないような。
「よくわからない」

「ねえ、キスしましょうよ」

いきなり唇が押し付けられた。息ができない。顔を見たら、知っている娘だった。嫌いじゃない。キスをしている。


「で、どうなのよ?」
「・・・・よくわからない」
意識はまだおぼろげだ。


・・・・そしてまたたゆたう。
砂浜で手をつないだまま、その娘と寝転んで夜空を見ていた。
夜空は血に染まり、星が流れ、美しかった。

(END)

詩作:言葉にならない虚しさ

言葉にならない虚しさ

疲れ、朦朧とした頭
言葉にならない虚しさ

好きな人に嫌われ
離れていき

孤独を感じ
生きることに疲れ

先にあるものも価値がなく

存在そのものの価値を感じることができない

虚しさ
虚しさを

ただ口走ることだけができる

悲しみ、虚ろな人間

言葉を失う虚ろ

語彙の貧弱

実存の穴

死を願いながら
なお死ぬことができない

生きることに希望を見出そうとし、
生き続けようとする

生きることは義務だと考えてしまっている

ほら
君の虚しさを誤魔化すお遊びはこの世にたくさんあるよ
それで死ぬ5秒前まで楽しみなよ

最後はみんな虚無に飲まれるけどね

短編「ある知人同士の会話」 作2008年8月

短編「ある知人同士の会話」
作2008 八月


序詩
『人が世界を語るのに、この世はあまりにも広すぎ、あまりにも人の時間は短い。未知は人知を飲み込み、世界はそれを沈黙によって答える』

 

 N氏はその日も日常と同じ生活をしていた。特に変わったことは無かったが、気分はいつもより悪くなかった。だがそういった気分の変動も毎度のことで、特に気になるようなことでもなかった。彼は彼の仕事に出かけ、彼の人生を生きていた。
 彼にとって人生はチャレンジの連続だった。今の仕事に就くのは子供の頃からの夢で、ずっと目指して努力してきた。決して平坦な道のりではなかったが、彼は信念を曲げずに彼の思い通りの夢を実現することができた。

 ある日彼は中学校の頃の友人Kに偶然会った。
「久しぶりだねN君、今は夢を実現してやりがいのある仕事についているそうじゃないか?調子はどうだい?」
彼は自らベラベラしゃべるような人間ではなかったが、特に急ぎでもなかったからKと少し会話をしてみることにした。と言っても、彼にとってKは長年会ったことも無い知人であったし、Kの良い噂を聞いてはいなかった。

「そうだね、いろいろあって一時はとても辛い時期もあったんだけど、今はとても充実しているよ。最近は大きなプロジェクトがあってそれが大変かな。でも、楽しいしやりがいがあるからいいんだ・・・・。」
そういいながらもKを観察していたが、どうもKは「普通」の感じではなかった。顔は整っていなかったし、まともな会社員のようでもなかった。衣服をみてもあまり世間体を気にしていないのがわかった。

「Kは元気にしてるかい?今は何をやっているんだい?」

「僕はなんでもないさ。僕は僕でしかないよ。でも、僕は本当に僕なのかな?」
『・・・・どういう意味だ?なんの話をしているんだろう?』Nは当惑したが、Kは特にふざけている様子でもなかった。

 

「僕はね、世界は作り物だと思うんだ。って言っても、神様が作ったとか人間が作った幻想だとかそういうものじゃない。でも、作られてるんだ。何かによってね。
君が今ある姿も、決して絶対君そのものでもないと思う。今生きてる君がしていることもやりがいも、全て君が今ここに生きているからなんだと思う。もし違う場所違うものになっていたら、それが人間だろうと宇宙人だろうと動物だろうと、君は違う有り様であったのは確実だと思う。それに、何が君の望ましい姿かも君が決めたわけじゃない。君は軍人になって国のために死ぬ英雄を望ましいと思うかい?」
「僕はそんなもの望まないよ。今はそんなの古いさ。戦争中の愛国主義者じゃあるまいし。」
「じゃあ、君がもしその戦争中の愛国主義者とやらだったらどうだろうか?」
「いや、でも僕は違うからわからないな・・でも、それに近い境遇だったら望んだかもしれない。」
「僕はね、君が今君でいることや欲していることや理想なんてものも全て作り物だと思うんだよ。もちろん僕たちはそういったものの中で生きているから幸せとか不幸とかが生まれて来るんだと思うけど。」
「どうもわからないな、僕は今の生活に満足だ。別だったらどうとか他の立場だったらとか、そういったことはどうでもいいと思うな。」
「僕はただ、僕が見てるものを話してみてるだけだよ。君がどうしようとそれは君の問題だからね。ただ、僕たちの本質はそれこそ自分の満足とはかけはなれたものかもしれないって思うんだよね。仕事での達成とか得た地位とか、そういったものは結局それこそ作られたもの、作られた願望、作られた感情・・・・・・なんていうかな・・・。つまり・・・作られているものの一部でしかないと思う。究極的には、僕らには作られていない部分なんてあるのだろうか?」
「君の話だと、結局全部作られてることになる。それは一体なんなんだい?一体誰によって作られてるんだい?第一、だったら本質なんて存在しないじゃないか。」
「作られてる・・・誰によってかなんてわからない。そこが不思議なんじゃないか・・?」

Nは、この話にも飽きてきていたので、もういい加減やめようとした。
 「K、君は本当に面白い奴だな。また暇つぶしにでもそういう話ができたらいいな。」
「そうかい?またいつでもいいさ。ただ、君はいつ本当の君になれるのかよく考えておいてほしいな。」
「わかったわかった。 Kも無事に生活しろよ」
そういって半ば侮蔑と込めてNは去った。

その後、二人は二度と会うことはなかった。Nは死ぬ前まで、それなりに彼の生に満足したようであった。Kは、その後は誰にも知られることはなかった。どこで何をしていたか、生きているのか死んでいるのかすら知っているものはいなかった。皆は彼の存在を忘れた。しかしそれもたいしたことではないだろう、いずれ皆忘れられていくのだから。
 KもNも彼の本質を生きたかどうか、それは死後の彼らにでも聞いてみるほか無いだろう。それができればの話ではある。

感情という病1 (SF、短編、イントロのみ)

1. 感応

 地下500メートル。
 限られた人間しか知らない研究施設に、彼はいた。
 彼は広い部屋の中に閉じ込められ、まるで自由に暮らしているように見えた。しかし彼は普通とは違う、彼の望まない力があった。
 
 人間は感情を共感させることができる。しかしそれは言葉や表情を通してのみである。彼は、直接共感する。そして、直接他人と他人を繋ぐ。
 
 他人の感じている感情・感覚・痛み・喜び・悲しみ・涙
 
 それらすべてを、実際につなげてしまう。
 
 それはときおり、彼が無意識に「繋げたい」と感じた時に、彼の周囲にいる人間たちだけに起こる現象だった。
 
 
だがそれは凶器だった

ある日彼は、自殺する人間と周囲の人間をつなげてしまった。だから、彼の周囲の人間はみんな、彼一人を除いて自殺してしまったのだ。

その大量自殺事件は、表立って公表されることはなかった。しかし駆けつけた研究員によって、即座に彼は捉えられ、地下へと連れて行かれることになった。

彼を囲っていた施設は、人類の新しい感覚のメカニズムを明らかにしようとしていた。それによって、世界は破滅もするが、救われもする可能性がある、そういう技術だったのだ。

人間の「直接接続網(ダイレクト・リンク・ネットワーク)」

その可能性が研究されていた

その場合、人間は個体から群体へ、より高度な理性、道徳、感情、共感を獲得できると、研究者たちは考えていた。そのメンバーには、神経科学、生化学、遺伝子工学者、生態進化学、社会学、哲学、等様々なメンバーが所属しており、日夜その可能性と危険性について議論されていたのだ。

目下、人類は絶滅寸前だった。

なぜなら、2度の核戦争、生物テロ、局地紛争の頻発、秩序の失われた世界。

人口は10%に減少し、気候変動の急激な変化によって食料生産が激減、大気と放射能汚染による出生率の低下、平均寿命の大幅な減少

すべてはもはや避けられない運命であるかと思われた。もはや為す術はない。

技術的な復活したとしても、それは同じことの繰り返しですらある。

だからこそ、ここでの研究に、人類はその共感性を選んだのである。

 

 

新世紀エヴァンゲリオン 〜Another End〜

「もういいの?」
「うん、僕はもういいよ」
「そう、良かったわね」

浜辺に横たわる二人、満ちることの無い心。

それはもう一つの終わり、始まり。
世界が崩壊し、すべては溶け合った
それは絶叫と混乱にある赤子のようだった。

補完。補いあい、完全なる存在になること。
満ちた心になること。

世界の終わりの日、全ての人は一つになった

アダム、リリスから生まれて全ての生命は、再びたった一つの、生命へ。

生命としてひとつになり、永遠に漆黒の空間を漂い続けること

満ちた赤子になること

それこそ「母」の願いだった。

「この地獄のような世界で生きていくのか、この子は。」

父はそう言った。

母は違うことを言った。

「生きていれば幸せになることはできますよ。だって、生きているんですもの」

母はそう微笑んで、消えていった。

結局、父も母に還っていってしまった。
・・・父さん。

母さんは、怖いよ、暴力的だよ、と、そう思う。

その愛は、僕らを傷つけるんじゃないのかって。

だってほら、今、こうやって混ざり合って、悲鳴ばかり聞こえるもの。


これが終わりでいいのだろうか。

しばらくしたら落ち着くのだろうか。