X-MEN論:もう一つの「フォースの覚醒」あるいは「最後のジェダイ(ミュータント)」

 
・「覚醒」というモチーフ
MARVELの手がけるX-MENスピンオフドラマシリーズ
 
「ローガン」に並ぶ最高評価とのこと
 
 「LEGION」
 「The Gifted 」
 
どちらも「覚醒」というタイトルの話数がある。
 
・「レギオン」の革新性と、「ジェダイ」との類似
 
 レギオンの主人公は、プロフェッサーXという強力なミュータント(ジェダイ・マスター)の息子という設定のデイビッド・ハラーというキャラクターである。
 その息子は幼少時から精神異常者としてみなされ、30過ぎて統合失調症患者として病院に入院している。しかし、あるきっかけにより、彼の妄想や幻覚はすべて「現実」であることがわかる。
 彼の能力は「ジェダイ」のようなものであり、物体操作・精神操作を基本とするテレキネシスサイコキネシスである。
 
 彼は自分の心の問題として、より多く悩み、自らの出自、トラウマ、すべてと戦うことになっていた。そのストーリー、描写すべては新鮮であり、革新性のある作品である。
 第一話を見るだけで、これはものすごい話だとわかった。
 
・「反乱軍」としてのミュータント
 今作では、X-MEN以降が描かれる。ミュータントはその危険性から、政府による管理・粛清対象となっている設定である(ジェダイと同じ)。
 デイビッド・ハラーはその困難な状況(大規模な人権侵害)の世界において、唯一の希望(ルーク・スカイウォーカー)と周囲に思われている。
 その「NEW HOPE」の覚醒と、彼による反乱の開始までを描いているのがシーズン1である。
 
 
・デイビッドは暗黒面へ堕ちるのか?
 
 デイビッドはその憎しみから、ミュータントの力の暗黒面により、残虐性を発揮、大量殺人をする。デイビッドには実は別のミュータントの意識が脳に侵入しているのだ。「シャドウ・キング」と呼ばれるミュータントは、デイビッドが生まれた時から彼の脳に侵入し巣食っていた。デイビッドの力の強大さに気づいており、それを精神の深層からコントロールしようとしている。
 つまりスター・ウォーズにおける「アナキン」VS「パルパティーン」の関係と類似している。
 アナキンはダース・ベイダーへと堕ちたが、デイビッドはまだ堕ちていない。
 
・リアルな弾圧を描く物語。マイノリティの人権運動。
 X-MENは人権運動の物語である。遺伝的に特異な存在という理由だけでその個性は剥奪され、迫害を受けたり政府に拘束されて実験させられたり、殺害対象となる。彼らは社会の異分子、マイノリティ、アンタッチャブルロヒンギャ)であった。
 
・暴力的政治運動の不可能な現代における疑似権利運動ドラマ
 
 思い出すのは黒人の公民権運動以降、暴力運動に変わってしまっていった歴史である。そしてテロリスト認定され、本格的な管理粛清の対象となっていった事実。
 そのようなアメリカの歴史的下地を基盤しているリアルなドラマである。そしていま、なぜ人権運動を描くのか?
 
・「The Gifted」というドラマ
最近スタートしたこのドラマも、X-MENのスピンオフである。しかし、X-MENは崩壊したことになっており、政府は本格的にミュータントを「社会の敵」とみなすようになっていた。プロフェッサーX、マグニートーによるミュータント解放運動の結果、結局解決されず、事態は悪化していたのだ。
 
これを前提としているスピンオフの物語は、その運動の挫折を経て生きていくミュータント達の物語となっていく。
 
 ジェダイとミュータントの比較で言えば、ミュータントはより存在が多く、特別な存在ではないことが言える。(遺伝子異常は発生しやすいらしいし)
 主人公デイビッド・ハラーはただの30過ぎのオッサンであり、統合失調症っぽくメンタルも不安定、強い力があるだけである。
 
レイやカイロ・レンのように、歴史を背負っているわけでも、なんらかの力の継承を受けた「ヒーロー」達の物語ではないので、親近感は湧きやすい。
 
「レギオン」は、より微小な、平凡な、私達市民のための物語であると思う。