GLL2 SF はじめのみ

## GLL REBIRTH

 世界政府の保持するナノマシンのアクセス権は、複製不可能な量子秘密鍵によって制御されていた。

分散制御技術が発達した21世紀移行、ドロイドやAI、各種ドローンは分散アプリケーションとして管理されることが多くなった。

分散アプリケーションとは、各個体がピアとして判断し、戦場全域の情報は常に相互通信によってやり取りされるものであう。ビットコインを始めとする分散型P2Pシステムは21世紀初頭に開発され、以降研究開発の進化とともに人工知能、ドローン、アンドロイド、戦場のドロイド、兵器のセキュアな管理の基盤技術として使われた。それらの利点は、予めソフトウェアさえインストールしておけば、中央の精密な制御なしに自律的に各マシンが行動するようになることだ。

戦場は常に多角的に多くの環境情報が変動するため、20世紀型の中央コントロールはもはや時代遅れとなり、有効な戦術的作戦行動はできなくなっていた。

分散アプリケーションを主力とした軍隊を初めて導入したアフリカのソレト連邦は内乱である革命戦争において部隊を投入した。その時の優秀なエンジニアによって開発された分散アプリケーション(DAPP-Proto-2)によって、米軍を始めとする国連多国籍軍は歴史的な大敗を喫した。小国で国力の弱いソレト連邦であったが、戦術性の高い作戦行動が行われたのだ。

以降、世界各国で分散型技術の軍事投入は加速した。

22世紀、GLLの反乱に際しても、世界政府の保持する強大な軍事力に反抗するのは不可能に等しかった。世界政府のDAPPは強固なアルゴリズムを実装しており、ほぼすべての通常兵器による戦闘に勝機は無かった。

それを逆転させたのは、GLLの上級技術員コーネリアスによる秘密鍵に関する情報のリークだった。

秘密鍵のリークによって、分散型システムは脆弱性を晒すことになり、GLLは軍隊を乗っ取り、反転攻勢と転じたのであった。量子秘密鍵はGsec2577型暗号と呼ばれ、従来破ることができないとされていたが、世界政府による自らの脆弱性研究はその弱点を発見し、それがリークによって突かれてしまったということだ。

コーネリアスは、戦後、GLL側で元世界政府の裏切り者として歓迎されていたのだが、GLLの強権的中央集権型の統治の限界を感じていた彼は、GLLのネットワークから自らの生体ナノマシンネットワークを分離し、独自のピアとしていることを選んだ。