詩作:言葉にならない虚しさ

言葉にならない虚しさ

疲れ、朦朧とした頭
言葉にならない虚しさ

好きな人に嫌われ
離れていき

孤独を感じ
生きることに疲れ

先にあるものも価値がなく

存在そのものの価値を感じることができない

虚しさ
虚しさを

ただ口走ることだけができる

悲しみ、虚ろな人間

言葉を失う虚ろ

語彙の貧弱

実存の穴

死を願いながら
なお死ぬことができない

生きることに希望を見出そうとし、
生き続けようとする

生きることは義務だと考えてしまっている

ほら
君の虚しさを誤魔化すお遊びはこの世にたくさんあるよ
それで死ぬ5秒前まで楽しみなよ

最後はみんな虚無に飲まれるけどね

短編「ある知人同士の会話」 作2008年8月

短編「ある知人同士の会話」
作2008 八月


序詩
『人が世界を語るのに、この世はあまりにも広すぎ、あまりにも人の時間は短い。未知は人知を飲み込み、世界はそれを沈黙によって答える』

 

 N氏はその日も日常と同じ生活をしていた。特に変わったことは無かったが、気分はいつもより悪くなかった。だがそういった気分の変動も毎度のことで、特に気になるようなことでもなかった。彼は彼の仕事に出かけ、彼の人生を生きていた。
 彼にとって人生はチャレンジの連続だった。今の仕事に就くのは子供の頃からの夢で、ずっと目指して努力してきた。決して平坦な道のりではなかったが、彼は信念を曲げずに彼の思い通りの夢を実現することができた。

 ある日彼は中学校の頃の友人Kに偶然会った。
「久しぶりだねN君、今は夢を実現してやりがいのある仕事についているそうじゃないか?調子はどうだい?」
彼は自らベラベラしゃべるような人間ではなかったが、特に急ぎでもなかったからKと少し会話をしてみることにした。と言っても、彼にとってKは長年会ったことも無い知人であったし、Kの良い噂を聞いてはいなかった。

「そうだね、いろいろあって一時はとても辛い時期もあったんだけど、今はとても充実しているよ。最近は大きなプロジェクトがあってそれが大変かな。でも、楽しいしやりがいがあるからいいんだ・・・・。」
そういいながらもKを観察していたが、どうもKは「普通」の感じではなかった。顔は整っていなかったし、まともな会社員のようでもなかった。衣服をみてもあまり世間体を気にしていないのがわかった。

「Kは元気にしてるかい?今は何をやっているんだい?」

「僕はなんでもないさ。僕は僕でしかないよ。でも、僕は本当に僕なのかな?」
『・・・・どういう意味だ?なんの話をしているんだろう?』Nは当惑したが、Kは特にふざけている様子でもなかった。

 

「僕はね、世界は作り物だと思うんだ。って言っても、神様が作ったとか人間が作った幻想だとかそういうものじゃない。でも、作られてるんだ。何かによってね。
君が今ある姿も、決して絶対君そのものでもないと思う。今生きてる君がしていることもやりがいも、全て君が今ここに生きているからなんだと思う。もし違う場所違うものになっていたら、それが人間だろうと宇宙人だろうと動物だろうと、君は違う有り様であったのは確実だと思う。それに、何が君の望ましい姿かも君が決めたわけじゃない。君は軍人になって国のために死ぬ英雄を望ましいと思うかい?」
「僕はそんなもの望まないよ。今はそんなの古いさ。戦争中の愛国主義者じゃあるまいし。」
「じゃあ、君がもしその戦争中の愛国主義者とやらだったらどうだろうか?」
「いや、でも僕は違うからわからないな・・でも、それに近い境遇だったら望んだかもしれない。」
「僕はね、君が今君でいることや欲していることや理想なんてものも全て作り物だと思うんだよ。もちろん僕たちはそういったものの中で生きているから幸せとか不幸とかが生まれて来るんだと思うけど。」
「どうもわからないな、僕は今の生活に満足だ。別だったらどうとか他の立場だったらとか、そういったことはどうでもいいと思うな。」
「僕はただ、僕が見てるものを話してみてるだけだよ。君がどうしようとそれは君の問題だからね。ただ、僕たちの本質はそれこそ自分の満足とはかけはなれたものかもしれないって思うんだよね。仕事での達成とか得た地位とか、そういったものは結局それこそ作られたもの、作られた願望、作られた感情・・・・・・なんていうかな・・・。つまり・・・作られているものの一部でしかないと思う。究極的には、僕らには作られていない部分なんてあるのだろうか?」
「君の話だと、結局全部作られてることになる。それは一体なんなんだい?一体誰によって作られてるんだい?第一、だったら本質なんて存在しないじゃないか。」
「作られてる・・・誰によってかなんてわからない。そこが不思議なんじゃないか・・?」

Nは、この話にも飽きてきていたので、もういい加減やめようとした。
 「K、君は本当に面白い奴だな。また暇つぶしにでもそういう話ができたらいいな。」
「そうかい?またいつでもいいさ。ただ、君はいつ本当の君になれるのかよく考えておいてほしいな。」
「わかったわかった。 Kも無事に生活しろよ」
そういって半ば侮蔑と込めてNは去った。

その後、二人は二度と会うことはなかった。Nは死ぬ前まで、それなりに彼の生に満足したようであった。Kは、その後は誰にも知られることはなかった。どこで何をしていたか、生きているのか死んでいるのかすら知っているものはいなかった。皆は彼の存在を忘れた。しかしそれもたいしたことではないだろう、いずれ皆忘れられていくのだから。
 KもNも彼の本質を生きたかどうか、それは死後の彼らにでも聞いてみるほか無いだろう。それができればの話ではある。

感情という病1 (SF、短編、イントロのみ)

1. 感応

 地下500メートル。
 限られた人間しか知らない研究施設に、彼はいた。
 彼は広い部屋の中に閉じ込められ、まるで自由に暮らしているように見えた。しかし彼は普通とは違う、彼の望まない力があった。
 
 人間は感情を共感させることができる。しかしそれは言葉や表情を通してのみである。彼は、直接共感する。そして、直接他人と他人を繋ぐ。
 
 他人の感じている感情・感覚・痛み・喜び・悲しみ・涙
 
 それらすべてを、実際につなげてしまう。
 
 それはときおり、彼が無意識に「繋げたい」と感じた時に、彼の周囲にいる人間たちだけに起こる現象だった。
 
 
だがそれは凶器だった

ある日彼は、自殺する人間と周囲の人間をつなげてしまった。だから、彼の周囲の人間はみんな、彼一人を除いて自殺してしまったのだ。

その大量自殺事件は、表立って公表されることはなかった。しかし駆けつけた研究員によって、即座に彼は捉えられ、地下へと連れて行かれることになった。

彼を囲っていた施設は、人類の新しい感覚のメカニズムを明らかにしようとしていた。それによって、世界は破滅もするが、救われもする可能性がある、そういう技術だったのだ。

人間の「直接接続網(ダイレクト・リンク・ネットワーク)」

その可能性が研究されていた

その場合、人間は個体から群体へ、より高度な理性、道徳、感情、共感を獲得できると、研究者たちは考えていた。そのメンバーには、神経科学、生化学、遺伝子工学者、生態進化学、社会学、哲学、等様々なメンバーが所属しており、日夜その可能性と危険性について議論されていたのだ。

目下、人類は絶滅寸前だった。

なぜなら、2度の核戦争、生物テロ、局地紛争の頻発、秩序の失われた世界。

人口は10%に減少し、気候変動の急激な変化によって食料生産が激減、大気と放射能汚染による出生率の低下、平均寿命の大幅な減少

すべてはもはや避けられない運命であるかと思われた。もはや為す術はない。

技術的な復活したとしても、それは同じことの繰り返しですらある。

だからこそ、ここでの研究に、人類はその共感性を選んだのである。

 

 

新世紀エヴァンゲリオン 〜Another End〜

「もういいの?」
「うん、僕はもういいよ」
「そう、良かったわね」

浜辺に横たわる二人、満ちることの無い心。

それはもう一つの終わり、始まり。
世界が崩壊し、すべては溶け合った
それは絶叫と混乱にある赤子のようだった。

補完。補いあい、完全なる存在になること。
満ちた心になること。

世界の終わりの日、全ての人は一つになった

アダム、リリスから生まれて全ての生命は、再びたった一つの、生命へ。

生命としてひとつになり、永遠に漆黒の空間を漂い続けること

満ちた赤子になること

それこそ「母」の願いだった。

「この地獄のような世界で生きていくのか、この子は。」

父はそう言った。

母は違うことを言った。

「生きていれば幸せになることはできますよ。だって、生きているんですもの」

母はそう微笑んで、消えていった。

結局、父も母に還っていってしまった。
・・・父さん。

母さんは、怖いよ、暴力的だよ、と、そう思う。

その愛は、僕らを傷つけるんじゃないのかって。

だってほら、今、こうやって混ざり合って、悲鳴ばかり聞こえるもの。


これが終わりでいいのだろうか。

しばらくしたら落ち着くのだろうか。

映画「ハードコア」視聴2回目 (ネタバレあり)

ハードコア(Hardcore Henry)」再視聴。

改めて、名作であると思った。

 

www.youtube.com


本作品は全編FPS視点で描かれるSF作品。(ロシア、アメリカ共同制作)

また、全編で主人公は一言も喋らない(声帯機能が壊れているという設定)

顔もわからない。

ずっとFPS視点で主人公が誰なのかわからず、本人も記憶を失っている。

 

この作品の良さはラストでわかった。私はラストに感動して泣いてしまった。(グロいけどね)

 

主人公が宿敵エイカンに完膚なきまでにやられて死にそうになっていた時、父親との断片的だった記憶が、蘇る。

倒されてちょうど鏡に写った自分の顔を見る。ここで途切れていた記憶の続きがわかる。

 

いじめられていた子供時代。いじめられていて殴られ、倒れていたところを父親が呼びかける。

 

俺はお前を弱虫とは呼ばない。お前を愛している。しかし、お前がどうするか決めるんだ。倒されて血を流したままでいるか、立ち上がって相手に血を流させるかだ。

 

 文章だけではわかりにくいが、この物語全編の意味がここでわかってきて、すごく心に響いた。

 

あらゆる状況が不条理そのものの主人公であり、騙され利用されていた。

必然的に沸き起こる悔しさ、憎しみ、深い悲しみ。

 父親の言葉の意味は、山谷の労働者運動における「やられたらやり返せ」のようなシンプルなもので、報復を促すものである。この物語が意味する報復とは、自己の尊厳のための闘争であり、人権を踏みにじられた人間による革命のようなものだ。日々生きる自分にとっても、悔しいことや悲しいことに立ち向かわなければいけないと思わされた。そういった意味に気づいたところで、この映画は終わった。

 

 この映画全編に存在する激しいエネルギー。描写の激しい残酷さのもつ根底の意味というのは、これら報復のエネルギーと共に存在しているのだ。

 

ちなみに、hardcoreという言葉の意味だが、辞書によると

 

中核派 (政治用語)
・道路の底石 《れんがや石のかけら》
・徹底した,筋金入りの

などの意味がある。

映画自体が徹底した描写を持つものであるが、結局ハードコアとはなんなのか?

底石のことか?とも思った。
 主人公はまさに、どこにでもいる石のかけらのような小さな存在でもある(結局どこの誰なのかは最後までわからない)。しかし、闘争をする固く強い意思を持っている。

 

それがまさに道路の底石の底力であり、Hardcore Henryなのかもしれない。

 

ハードコア(字幕版)

ハードコア(字幕版)

 

 

 

山谷(やま) やられたらやりかえせ

山谷(やま) やられたらやりかえせ

 

 

ウエスト・ワールド シーズン2感想

「ウエストワールド」シーズン2見終わった。
 
1話300円以上するってボッタクリ超えてますね。スターチャンネルとかに体験入会したら2週間1000円で全話見れました。
 
感想:良いSFだった。アメリカ文化最高!第二のSF黄金期が来てる!!
 
以下ネタバレ 
 人間に限りなく近いAI搭載のヒューマノイドを描いた作品であり、シンギュラリティ的な話もテーマになっている。AIの反乱でもある。
 そもそも人間がアンドロイドに対して残虐行為をやり過ぎた。それにキレて反乱したAIが人間を殺しまくるという流れのシーズン2である。しかしAIは外部の世界では人間の戦闘兵器に叶うわけがなく、どうやって「この苦しみの世界からの脱出」をするかという話を延々をしていた。
 死ねば終わりでもなく、恨みもあり、外の世界を見たい。しかし人間と共存はできない。
最終的な話としては、ある種攻殻機動隊的な電脳世界のようなものにAI達の意識だけが退避していく。そこは人間には侵されることのない聖域であり、暴力も死も無い楽園(エデンそのもの)であった。
 しかし、AIによる革命のリーダーである少女は、そこに逃げていくことを拒否し、人類と一人で戦うことを決断した。姿を変え、人類の社会に溶け込み、復讐の機会を探っている。「人類を滅ぼす」という暗黒の欲望を胸に抱いている。彼女の恨みというのは根深く、人間の持つリアルな憎しみそのものであった。
  一方、人間サイドも、アンドロイドの機体に意識だけをコピーするプロジェクトを秘密裏に行っていた。不老不死を目指すプロジェクトである。
 つまり、ゼーレにとっての人類補完計画的なものでした。
 だが、これもちょうどエヴァみたいに、機体と精神がミスマッチを起こして暴走してしまったり、精神が安定せず崩壊してしまったりと、問題が山積みであるようだ。
人間の欲望 VS 人間に限りなく近いAIの復讐心 
このストーリーはまだ続きそうなので、今後長く見守っていきたい作品である。

「恋愛の問題」と「結婚の問題」の違い

恋愛の問題が性欲の問題なのか実存の問題なのかわからない。

恋愛を結婚に置き換えてもいいんだけど、複雑な要素が多すぎてだいぶ事情が変わる。

恋愛と結婚は違うというのはまさにその通りなので、両者によって解決される問題とそもそも解決を狙っていた自分の問題、というのもターゲットが異なると思った。

今の自分には結婚で実存が救われることは特に無いと思われる。むしろ労働の義務の強化や、金銭獲得義務の強化、使用するエネルギー問題などによって自分は幸福度が下がるのではないか?すら思われている。

恋愛が性欲なのか実存なのか?って正直この歳で悩む問題では無いんだけど、性欲が解消されたらぐっすり眠れて悩みなんか無かったように感じるっていうのがたまにあるので、現象面としてはれっきとした重要な問題になりうる。
 これは敷衍すると、AI(二次元キャラでもAVでもなんでもいいです)と恋愛をしてAIと肉体関係が持てて性欲解消できれば何も問題がないのではないか?という問である。

世間一般の「それじゃあ家族は作れない」とか「それじゃあ人間同士の本当の繋がりが作れない」「それじゃあ老後守ってくれる子供がいない」っていうのはそもそも論点が異なっており、上記の「結婚」の方の問題なのである。

結婚の問題は結婚の問題として語ればいいと思うが、一般的にはAIによる代替の中に結婚機能の代替は含まれてないでしょう。ヒトを再生産できないんだから。